4月19日放送の「きょうの健康」で紹介された『増加中!大腸がん 最新情報「どれが最適?遺伝子型で薬を選択」』が興味深かったので紹介します。

 

最新の調査によると、大腸がんの発症率が年々増加していることが明らかになっています。しかし、最近の医学の進歩により、大腸がんに対する治療法も大きく進歩しており、特に遺伝子型に基づいた個別化された治療が注目されています。

 

遺伝子型によって、薬剤の効果が異なることが明らかになっており、それに応じて最適な薬剤を選択することで、治療効果を最大化することができます。

 

「きょうの健康」では大腸がんに対する最新の治療法について、遺伝子型に基づいた薬剤選択の重要性や、その方法について解説されましたので紹介します。講師はがん研究会有明病院部長の山口研成さんでした。

 

大腸がんの薬物治療の最新情報

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大腸がんの薬物治療には、化学療法やターゲット治療、免疫療法などがあります。こちらに最新情報を紹介します。

 

免疫チェックポイント阻害剤

 

免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞が免疫細胞から逃れるのを防ぐことで免疫系を刺激し、がん細胞を攻撃する薬剤です。2021年には、カドラリズマブ、ペムブロリズマブ、ナボリマブなどが大腸がんの治療に承認されています。

 

EGFR抗体薬物複合体

 

EGFR抗体薬物複合体は、腫瘍細胞のEGFR受容体に結合して、がん細胞の増殖を抑制する薬剤です。2021年には、カルボジタキセルとラムシルマブの組み合わせが、進行大腸がんの治療に承認されました。

 

ターゲット治療薬

 

ターゲット治療薬は、がん細胞が持つ異常な遺伝子やタンパク質に対して作用する薬剤です。2021年には、RAS遺伝子変異陽性の患者に対するエルロチニブとビバクズマブの併用が承認されました。

 

化学療法

 

化学療法は、がん細胞を殺す薬剤を使用する治療法です。2021年には、FOLFOXとCAPEOXの併用が、進行大腸がんの治療において効果的であることが報告されています。

 

以上が、大腸がんの薬物治療における最新情報です。しかし、個人の病状や治療歴などによって最適な治療法が異なるため、医師と相談して治療方針を決定することが重要です。

 

 

がんを狙い撃ちにする分子標的薬

 

 

がんを狙い撃ちにする分子標的薬は、がん細胞の異常な増殖や転移を抑制するために設計された薬剤であり、様々な種類があります。こちらに代表的な分子標的薬を挙げています。

 

キナーゼ阻害剤

 

イマチニブ (商品名:グリベック):慢性骨髄性白血病の治療に用いられます。
エルロチニブ (商品名:タルセバ):肺がんの治療に用いられます。
ソラフェニブ (商品名:ネクサバール):肝細胞がんの治療に用いられます。

 

ホルモン受容体阻害剤

タモキシフェン (商品名:ノルバデックス):乳がんの治療に用いられます。
レトロゾール (商品名:フェマーラ):乳がんや子宮内膜がんの治療に用いられます。

 

免疫チェックポイント阻害剤

 

イピリムマブ (商品名:ヤーボイ):メラノーマや肺がんの治療に用いられます。
ペムブロリズマブ (商品名:キイトルーダ):多くのがん種の治療に用いられます。

 

エピジェネティック阻害剤

 

バルプロ酸 (商品名:デパケン):悪性リンパ腫や白血病の治療に用いられます。
リンデロノ酸 (商品名:アジュバント):悪性腫瘍の治療に用いられます。

 

アンチアンジオテンシン薬

ベバシズマブ (商品名:アバスチン):多くのがん種の治療に用いられます。

 

以上は代表的な分子標的薬の例ですが、他にも多くの種類があります。治療にはがんの種類や進行度に合わせて複数の薬剤を組み合わせることがあります。治療には医師の指示のもと、専門家による検査や診断が必要です。

 

 

薬物治療をしながら入院しなくても自宅で暮らし仕事や家事をすることは可能?

 

 

ガンの薬物治療を受けている人でも、入院しなくても自宅で暮らすことは可能です。ただし、治療の種類や病気の進行状況によっては、一時的に入院する必要がある場合があります。

 

治療中に自宅で仕事や家事をすることができるかどうかは、個人の状態によって異なります。治療によっては、体力が低下したり、吐き気や嘔吐などの副作用が出ることがあります。そのため、無理をして仕事や家事をすると、病気や治療に対するストレスが増える可能性があります。

 

ガンの薬物治療を受けている場合は、医師の指示に従い、適度な運動や栄養バランスの良い食事を心がけることが重要です。また、治療によって出る副作用や症状については、医師や看護師に報告し、適切なケアを受けることも必要です。

 

 

総じて、治療中に仕事や家事をすることは可能ですが、自分の体調を十分に理解し、医師の指示に従うことが重要です。治療中にストレスをため込まないように、十分な休息を取り、適度な運動や食事、睡眠を心がけることが大切です。

 

 

大腸がんでがんの遺伝子変異に合わせてがんを狙い撃ちにする分子標的薬

 

 

大腸がんは、腸管内皮細胞から発生する悪性腫瘍であり、遺伝子変異が原因で発生することがあります。遺伝子変異ががんの発生に関与することから、遺伝子変異に基づく治療法が研究されています。

 

分子標的薬とは、がん細胞の特定の分子標的(例えば、細胞増殖を促進するタンパク質)に作用する薬剤のことを指します。大腸がんにおいても、分子標的薬が研究されています。

 

例えば、大腸がんにおいて遺伝子変異が多く見られるRAS遺伝子に対する分子標的薬があります。RAS遺伝子に変異がある場合、がん細胞の増殖に重要なシグナル伝達経路が活性化されているため、その経路に作用する分子標的薬が有効とされています。

 

また、EGFR遺伝子に変異がある場合には、EGFRに作用する分子標的薬が用いられます。EGFRは細胞増殖や生存に関与するタンパク質であり、EGFR遺伝子に変異がある場合、がん細胞がEGFRを過剰に発現していることがあります。

 

これらの分子標的薬は、がん細胞に特異的に作用するため、正常細胞には影響を与えず、副作用が少ないという利点があります。ただし、適応症が限定的であり、効果が出る患者さんも限られているため、適切な遺伝子検査を行い、患者さんに適した治療法を選択することが必要です。

 

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がん研究会有明病院部長の山口研成さんのご紹介

 

 

山口研成さんは、がん研究会有明病院の部長を務める医師であり、がん治療における権威的な専門家の一人です。専門分野は、消化器がん、特に胃がんと大腸がんです。

 

山口研成さんは、東京大学医学部を卒業後、がん研究会有明病院にて医師としてのキャリアをスタートさせました。その後、米国のシカゴ大学医学部に留学し、がん治療の最新技術を学びました。帰国後は、東京医科歯科大学付属病院や国立がん研究センター東病院などで研究や臨床に携わり、現在に至っています。

 

山口研成さんは、胃がんや大腸がんなどの消化器がんに対する治療に精通しており、手術や化学療法、放射線療法、免疫療法など、様々な治療法を熟知しています。また、がん患者さんと家族のサポートにも力を注いでおり、患者さんが安心して治療を受けられるよう、心のケアにも力を入れています。

 

山口研成さんは、がん治療において常に最新の技術や知見を追求し、患者さんに最適な治療法を提供することに取り組んでいます。その結果、多くの患者さんから高い信頼と評価を得ています。

 

 

「きょうの健康」4月19日放送『増加中!大腸がん 最新情報「どれが最適?遺伝子型で薬を選択」』まとめ

 

 

大腸がん治療において、患者の遺伝子型に応じた個別化治療が注目されています。現在、大腸がんの遺伝子型を調べ、その遺伝子型に合わせた治療法を選択する研究が進んでいます。

 

一例として、RAS遺伝子異常を有する患者には、一部の抗EGFR抗体薬剤は効果がないとされ、治療に選択しないことが推奨されています。

 

また、臨床試験である「BEACON-CRC」では、BRAF遺伝子異常を有する大腸がん患者に対して、3種類の薬剤を併用することで、奏効率が向上することが報告されました。今後、患者の遺伝子型に応じた個別化治療がますます進展することが期待されています。

 

しかし、一方で、治療に必要な遺伝子型検査は高額であり、保険適用外であることも多いため、課題も残っています。

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